新潟地方裁判所長岡支部 昭和57年(ワ)228号 判決
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
一 求める判決
(一) 原告
1 被告らは各自原告に対し金八六八万七、九〇一円を支払え。
2 訴訟費用は被告らの連帯負担とする。
3 仮執行宣言(第一項につき)
(二) 被告ら
主文第一、二項と同旨
二 主張
(一) 原告
「請求原因」
1 訴外A(以下、訴外Aと略称)と被告Y2は昭和五三年八月頃、本当は五七万円位の価値しかなかつた別紙物件目録記載の土地(以下、本件土地と略称)を代金九八六万円で原告が被告会社より買受けたように仮装し、訴外日動火災海上保険株式会社(以下、訴外会社と略称)から原告名義で土地買入代金を借入れ、これを騙取しようと共謀し、これにより原告が損害を蒙つてもかまわないと考え、原告に対し被告会社よりの本件土地買受人名義および訴外会社よりの借入人名義の貸与を申入れたので、原告はこれを承諾し、訴外Aと被告Y2は同年九月頃、訴外会社から原告名義の借入金名下に六五〇万円の交付を受けて、これを騙取した。
2 その結果、原告は訴外会社から借入金返済を迫られることになり、昭和五九年四月六日現在、六七〇万七、七九四円の元本、利息金のほか一二二万〇、一〇七円の遅延損害金(合計七九二万七、九〇一円)の債務を負い、これと同額の損害を蒙つた。
3 更に原告は昭和五七年四月頃、弁護士棚村重信(原告訴訟代理人)に右事件の処理を委任し、右損害の約一割である七六万円の手数料支払を約し、これと同額の損害を蒙つた。
4 被告Y2は昭和五三年以降被告会社の代表取締役であり、被告Y2の前記行為はその職務を行うにつきなされたものである。
5 よつて原告は被告らに対し右不法行為に基づく損害合計八六八万七、九〇一円の連帯支払を請求する。
(二) 被告ら
「請求原因に対する認否」
その1のうち原告が昭和五三年八月頃、訴外Aの申入により本件土地買受人名義および訴外会社からの借入人名義の貸与を承諾したことは認めるが、その余は否認する。
その2は否認する。
その3は知らない。
その4は認める。
「抗弁」
原告は訴外Aらと共謀して訴外会社から金員を騙取したのであるから、仮に被告らがこれに加担したとしても、民法七〇八条もしくはその精神に照らすと、被告らに対し損害賠償請求をすることは許されない。
(三) 原告
「抗弁に対する認否」
否認する。
三 証拠
本件訴訟記録中の書証目録、証人等目録に記載のとおりであるから、それを引用する。
理由
一 請求原因1のうち原告が昭和五三年八月頃、訴外Aの申入により本件土地買受人名義および訴外会社よりの借入人名義の貸与を承諾したことは当事者間に争いがなく、成立に争いがない甲第一、二、四号証、乙第一、二、四号証、原本の存在およびその成立につき争いがない甲第三号証の一ないし三、原告本人X、被告本人Y2各尋問の結果によると、
1 訴外Aは不動産業のほか焼鳥屋などを営み、原告は昭和五二年一〇月頃、訴外Aに雇われた。
2 不動産業を営む被告会社は本件土地の前所有者訴外Bから本件土地を坪当り七、〇〇〇円で買受けたが、被告会社の代表取締役である被告Y2は昭和五三年夏頃、子供の頃からの友達である訴外Aから、原告に店を一軒持たせてやりたいが、それには少くとも三〇〇万円位は要る。本件土地を自分が原告名義で買受けるが、ローン会社からの借入金のうち三〇〇万円位をそれに使いたい、といわれ、本件土地を代金一七三万円(坪当り約一万円)で売渡すことにしてその旨の売買契約書(買主は原告名義・乙第二号証)を作成したが、それとは別に代金を九八六万円とする虚偽の売買契約書(買主は同じく原告名義・甲第一号証)をも作成し、これをローン会社(甲第三号証の二、乙第一号証によると、ローン会社は訴外会社ではなく、訴外日本住宅金融株式会社であり、訴外会社は右会社に住宅ローン保証保険金を支払つて求償権を取得したものであることが認められる。)に提出し、六五〇万円を借入れることになつた。
3 その頃、原告は訴外Aから、自分はローン借入の名義を使い切つているので名義を貸して欲しい。本件土地は二、三か月ねかして売ればもうかる、といわれて、本件土地買受人名義およびローン借入人名義の貸与を求められ、断り切れずにこれを承諾して数通の書類(甲第一号証、乙第二、四号証がこれに当る。)に署名押印し、その約一週間後に訴外Aから甲第一号証の写を一部貰い、ローン会社から照会があればこの契約書のとおりに答えて欲しい、と頼まれ、これも承諾した。
4 訴外日本住宅金融株式会社からの借入金六五〇万円は被告会社が受領し、被告会社はそのうち一七三万円を本件土地代金として取得し、残金四七七万円はすべて訴外Aに交付した。
5 訴外Aは右借入金で原告のための店を開設したりはせず、また原告には一円も渡さず、すべて自らが費消し、昭和五七年一〇月頃、倒産し、行方不明となつた。
6 訴外Aはローン借入後、若干の元本、利息金を支払つたが、残余を支払わないので、訴外会社は日本住宅金融株式会社に住宅ローン保証保険金として六四七万八、八五六円(元本六一四万六、八六四円、利息など三三万一、九九二円)を支払つて求償権を取得し、昭和五七年七月、かねて右求償権担保のため本件土地に設定していた抵当権実行の申立をなし(本件土地については昭和五三年九月二五日付で原告宛の所有権移転登記と右抵当権設定登記がなされた。)、その売却金六五万円全額の配当を受けた。
7 被告会社および被告Y2は住宅ローン騙取に協力、加担したとして訴外会社から責任を追及され、右金員の返還を約している
ことがそれぞれ認められ、右認定事実よりすると訴外Aや被告Y2は原告名義を借りたり、売買代金額を水増しして住宅ローン借入金を騙取しようと共謀し、これを実行(但し原告もこれに協力)したことが認められる。
しかし前記証拠および右認定事実によつても、訴外Aはともかく、被告Y2がこれにより原告に害を加えることを認識していたと推認することはできず、ほかに被告Y2の原告に対する害意を認めるに足りる証拠はない(むしろ前記証拠および右認定事実によると、訴外Aは自己が費消する金員を騙取しようとしていたにも拘らず、被告Y2にはそれを秘し、原告に店を持たせるための資金が欲しい、と言葉たくみに話を持ちかけ、被告Y2はこれを信じ、被告会社が坪七、〇〇〇円で買つた本件土地を坪一万円で売つて差益をうる、ということだけを考えて本件土地を売却し、虚偽の売買契約書(甲第一号証)を作成して、ローン借入金騙取に協力しただけであり、現在では訴外会社に対する前記返還の約束により、原告同様の被害を受けていることがうかがえる。)。
二 そうすると他の点を検討するまでもなく、原告の本訴請求は失当であるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおりに判決する。
(裁判官 上杉晴一郎)
<以下省略>